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執筆者の写真ユーミン

美容業界の教育、今と未来

更新日:2022年8月12日





「美容業界は教育産業」と言われています。


経営の資源は「人」「モノ」「金」「情報」と言われますが、美容業界において最も重要な資源が「人」である事は間違いありません。


「人材」ではなく、まさに「人財」と言えるでしょう。


そして美容師は「国家資格」という特徴があります。そのため、小学生か中学生か、どこかのタイミングで「美容師になりたい!」と思ったら美容師養成施設(美容学校)に通って美容師国家試験取得の為に学科と実技の勉強が必要になります。


「美容業界の教育」は実はこの養成施設から始まっています。

そして無事美容師国家試験に合格し美容業界には毎年新しい人財が入って来ます。しかし、国家資格を取得したとはいえ、現状では即戦力としてお客様を担当できないのが現状です。


そしてサロンでの教育がスタートします。


その人財が文字通り財を生み出す美容師として活躍できるか否かは、もちろん本人の努力もありますが、入社したサロンの教育にかかっていると言っても過言ではありません。


そこで「美容業界の教育、今と未来」と題し、特に新卒者を対象とした美容業界の教育における現状と、未来に向けて取り組むべき課題を6つのポイントにまとめてお話ししていきます。



1、何の為に教育をするのか?

「教育の目的」


まず、大前提のお話しですが、皆さんのサロンでは「何の為に教育をするのか」考えた事がありますか?美容学生の数が減り求人が厳しい昨今において「とりあえず美容師を増やす為」と言った安易な理由のサロンは無いと思います。新入社員に教育をする事はいつの間にか当たり前になっていますが、その目的が重要です。美容業界では「国家資格なのに離職が多い」という何年も解決できていない課題があります。

「どういう人財を育てたいのか」

ブランディングの為か、スタッフの幸せの為か、サロンの発展の為か、そしてその為にどういう人財を育てたいのか、これを機会に是非、明確にしてください。


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ワーク


教育の目的


◯◯の為に◯◯な人財を育成します。


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2、教育は求人活動から始まっている

「条件ではなく共感」


教育について「多くのサロンがまだ気が付いていないが大切な事」をお話しします。サロンの教育は実は「求人活動から始まっている」のです。求人活動は「美容学生への発信」がベースにあります。発信の手段は色々ありますが、代表的な発信の手段はSNSです。




※求人活動における発信の手段


その発信をきっかけに「ガイダンス」「会社説明会」「サロン見学」そして「面接」「採用」と進んで行きます。この発信から「未来の人財を教育していく」事を意識してください。サロンの理念、ビジョン、実現したい未来、教育の目的、具体的な教育カリキュラム、そして求める人物像に付いてしっかり発信しましょう。条件や待遇ではなく「共感」がポイントです。美容業界の発信を見ていますとまだまだ条件や待遇面が多いと感じています。しかし、求人の常識ですが条件や待遇で入ると離職しやすいのです。同じ仕事なら「もっといい条件、もっといい待遇」という会社を求めて転職していくからです。


求人活動から教育されて入社した人財たちはすでにあなたのサロンの理念、ビションに共感し、教育の目的も理解し共感した状態でしょう。ある意味同じ価値観の人財たちの為、新入社員研修もスムーズに行う事が可能です。



3、時代に合った教育カリキュラム 

「全体から個別へ」


サロンに入社し社員となった人財たちはサロン独自の教育カリキュラムによって美容師へと成長して行きます。ここでは時代に合った教育カリキュラムについてお話しします。


数年前の教育カリキュラムはどこのサロンもほぼ同じでした。接客から始まってシャンプー。シャンプーに合格しないと次のステップに進めない為、シャンプーで挫折して離職してしまう人も多くいました。しかし、今は個別の能力に合わせた教育に取り組むサロンが増えています。


主な理由は

・働き方改革により、主に営業後行われていた全体で集まる時間の確保が困難になった

・時代の変化と共に個人を尊重する時代になった

・美容学生のスキル、やりたい技術も多様化している

などがあげられるでしょう。


長年行われていた全体教育から個別教育への移行については、その過程における試行錯誤や全体教育を受けて来た先輩社員からのクレームなどで、教育カリキュラムを決める幹部陣にはかなりの苦労が見受けられました。


しかしコロナで、全体に集まれないばかりで無く、リアルも不可能になった為、オンライン化を取り入れるなど美容業界の新入社員教育は大きく変わりました。令和4年現在では「全体と個別」「リアルとオンライン」をうまく取り入れ、いわばハイブリッドな教育カリキュラムが定着しつつあるようです。


個別教育において、「メンター制度」や「ブラザーシスター制度」と言われるように、入社1年目のスタッフに決められた先輩や幹部が付いて手厚く指導していくやり方を行うサロンも多いです。目標を共有し「いつでも質問できる」状態にしておき、問題を先延ばししないで解決できる方法で離職が減ったという成果もあります。


また、「仕事のやりがい」を持たせる教育として、カラーやマツエクなど好きな技術から習得し入客テストに合格した技術からどんどん入客する方法を取るサロンも多いようです。


そして「早期スタイリストデビュー」という問題があります。

アシスタント時代に離職が多い為、早くデビューする事で仕事のやりがいを持たせようと数年前、サロンは人財獲得の為、こぞって早期デビューを提唱し「早期デビューの戦い」になった時期がありました。

しかし最近では下記のグラフのように早期デビューにこだわる学生もそれほど多くはありません。むしろ多様化の方向に進んでいます。



※美容学生120名にアンケート「スタイリストデビューの早さにこだわりますか?」


4、若者の仕事観

「Z世代の特徴」


美容業界が新卒で受け入れる高校生、美容学生は「Z世代」と言われます。ここでは「Z世代」の仕事観について紹介します。「社会に貢献できる仕事がしたい」「仕事上の競争た優劣に興味がない」「バリバリ働いて稼ぐよりマイペースに」「資格取得やスキルアップを頑張りたい」

「副業もしたい、副業に関心がある」それぞれの質問に対して60%以上が当てはまると回答しています。社会貢献、資格取得に関しては美容師はまさにピッタリの仕事です。競争や働き方、副業(色々な職種兼用)に関しては自社の教育の目的に照らし合わせ、時代に合った教育カリキュラムを作っていく必要があるでしょう。



※BIGLOBE「Z世代の意識調査」全国の18歳~25歳の男女600人を対象

調査日は2022年1月27日~1月28日、調査方法はインターネット調査。



5、教育のポイント

「意味を説明する」


ここではZ世代の新卒に限らず、若手スタッフ(30代未満)への教育に付いてひとつアドバイスさせていただきます。それは「意味を説明する」という事です。アメリカ人心理学者のマーティン・セグリマンが唱えた人間の5つの欲望があります。「達成」「快楽」「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」の5つです。30代以前は後ろの3つを重視するとの事です。

「意味のある事を好きな仲間たちと夢中になってやる」それがモチベーションに繋がるのです。若者が嫌う掃除も意味を付けることにより「作業ではなく立派な仕事」になります。美容学生が憧れるクリエイティブもその意味を説明すれば単純に憧れだけでは取り組めない事を知るでしょう。


6、未来の教育

「DX化の推進」


未来の学校教育は今のように1人の先生が何十人もの生徒を教える一斉教育ではなくなるといわれています。子供たちに教育的アプリやゲームの搭載されたノートパソコンさえ与えれば、勝手に自分で読み書きを学ぶようになります。それと同時にインターネットの使い方も学習するようになり、過去の勉強履歴、質問履歴、ネットでの検索履歴、現在の感情、これらの情報からAIがその子供にとって今、最善の学習方法を提供するようになるとの事です。




また、「VR」によって子供たちがバーチャルな物体とバーチャルな世界の両方を探求できるようになります。ピラミッドなど世界的な史跡をツアーできたり、織田信長など歴史上の人物と会話する事も可能になるなど、テクノロジーの力で教育が大きく変わろうとしています。


美容業界においてもテクノロジーを教育に取り入れる動きが活発化しています。オンライン講習や動画を使った教育などはかなり浸透しています。VRは国家試験の練習などで活用する事例が既に出てきていますが、これから取り組むべき分野でしょう。


IT後進国と言われる日本ですが、学校教育でのDX化は政府の「GIGAスクール構想」が進み準備万端だそうです。テクノロジーを当たり前のように取り入れる子供たちが美容業界に入ってくる未来はすぐそこに来ています。美容業界の教育の未来はDX化無しに語る事はできないでしょう。




※参考文献


「モチベーション革命」(尾原 和啓/著)

「2030年:全てが加速する世界に備えよ」(ピーターディアマンディス/著 スティーブンコトラー/著




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